エアーズシー証券のメルマガ 2026年10月26日号

1.マーケットのこと(今回の視点)
今週のヘッジファンド
HEDGE FUND WEEKLY
2026年10月23日号
対象期間:2026年10月19日(月)~10月23日(金)
今週のヘッジファンド業界では、AI関連株からの急速な資金引き揚げ、ヘッジファンドの長期的な収益見通しの上方修正、そして債券市場におけるリスクの拡大が注目されました。
ゴールドマン・サックスのデータでは、ヘッジファンドによるテクノロジー株の保有削減が過去10年間で最大となりました。一方、JPモルガン・アセット・マネジメントは、ヘッジファンドの長期的な期待リターンを引き上げています。
欧州では国債市場の混乱がヘッジファンドの運用に影響し、アジアでは中国のクオンツ運用会社への海外投資家の資金流入が再び活発化しています。
今週押さえておきたい7つのニュースをご紹介します。
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1.ヘッジファンド、AI関連株を過去10年間で最大規模の売却
ヘッジファンドによるテクノロジー株の保有削減が、過去10年間で最大の規模となりました。
10月19日に伝えられたゴールドマン・サックスのプライムブローカレッジ部門のデータによると、10月15日までの5営業日で、ヘッジファンドは2016年の集計開始以来、最も速いペースでテクノロジー株のポジションを縮小しました。
特に売却が集中したのは半導体関連株です。
同期間、NASDAQ100指数は週間で5.5%下落しました。
また、ヘッジファンドのネット・レバレッジは48.6%と過去1年間で最低の水準に低下しています。
もっとも、テクノロジー株はゴールドマン・サックスのプライムブローカレッジ顧客の保有配分の23.5%を占めており、過去5年間と比較しても依然として高い水準にあります。
なぜ重要なのか
AI関連株は、ここ数年間、世界の株式市場をけん引してきました。
しかし、AI関連企業への巨額投資が実際にどれほどの利益につながるのかという疑問が強まり、投資家の姿勢に変化が生じています。
注目したいのは、今回の売却が必ずしもAI企業の将来性を否定するものではないことです。
ヘッジファンドは、将来の成長を期待する一方で、短期的な株価変動や投資ポジションの集中リスクを抑えるため、保有株式を売却することがあります。
AIという成長テーマへの期待と、現在の株価が適正かどうかという判断は、分けて考える必要があります。
ヘッジファンドにとっても、成長企業を見極める能力に加え、適切なタイミングでリスクを削減する能力が一層重要になっています。
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2.JPモルガン、ヘッジファンドの長期期待リターンを年率6.7%へ引き上げ
JPモルガン・アセット・マネジメントは10月19日、2027年版の長期資本市場見通しを公表しました。
同社は、今後10~15年間の分散型ヘッジファンドの期待リターンを、従来の年率5.3%から年率6.7%へと1.4ポイント引き上げました。
引き上げの背景には、金利水準の上昇や市場変動の拡大によって、ヘッジファンドが独自の収益機会を捉えやすくなるとの見方があります。
また、同社は米ドル建ての株式60%・債券40%のポートフォリオについて、今後10~15年間の期待リターンを年率7.0%と予測しています。
これに対し、オルタナティブ資産を30%組み入れたモデル・ポートフォリオでは、期待リターンが年率7.5%に上昇し、リスク調整後の収益性を示すシャープレシオも21%改善するとの試算を示しました。
ただし、これらは同社の前提条件に基づく長期予測であり、実際の運用成果を保証するものではありません。
なぜ重要なのか
従来、資産運用の基本は株式と債券を組み合わせることでした。
しかし、インフレや財政問題、金利変動などの影響により、株式と債券が同時に下落する局面もみられるようになっています。
こうした環境では、株価の上昇だけに依存せず、金利、為替、商品、企業間の価格差などから収益機会を探すヘッジファンドの役割が改めて注目されます。
今回のJPモルガンの見通しは、ヘッジファンドを単なる高収益を狙う投資先ではなく、ポートフォリオ全体の分散効果やリスク調整後リターンを高めるための資産として評価している点で興味深いものです。
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3.AI関連企業の信用リスクに警戒、CDS取引が急増
AI関連企業の巨額な資金調達に対して、債券市場でも警戒感が高まっています。
10月20日の報道によると、Oracle、Alphabet、Amazon、Meta、Nvidiaなどの大手テクノロジー企業の債務を対象とするCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の取引が急増しています。
モルガン・スタンレーの調査では、主要AI関連企業7社を対象とするCDSの週間取引額は、7月には平均20億ドル未満でしたが、9月には90億ドル超に拡大しました。
CDSとは、企業が債務不履行に陥った場合の損失に備えるための金融取引です。
AI関連企業によるデータセンターや半導体への巨額投資が続くなか、将来の収益性や借入金の返済能力を慎重に評価する動きが強まっています。
なぜ重要なのか
AI関連投資というと、Nvidiaなどの株価の動きに注目が集まりがちです。
しかし、AIインフラを整備するためには、データセンター、電力設備、半導体などに莫大な資金が必要です。
その資金の一部は借入れによって調達されており、今後は企業の成長性だけでなく、財務の健全性も重要な評価対象となります。
ヘッジファンドにとっては、株式市場に加え、企業の信用力の変化を捉えるクレジット戦略にも新たな投資機会が生まれる可能性があります。
AI関連投資のリスクは、株価だけでなく債券や信用市場にも広がり始めています。
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4.欧州国債市場の混乱、ヘッジファンドの金利トレーダー約100人が離職
欧州の国債市場での損失を背景に、ロンドンのヘッジファンド業界で金利トレーダーやポートフォリオ・マネージャーの離職が相次いでいます。
10月20日の報道によると、業界関係者の推計では、欧州国債の運用に携わる人材の離職は約100人に近づいています。
背景にあるのは、フランス国債を中心とした債券価格の下落です。
一部のヘッジファンドでは、国債を保有すると同時に、その国債を担保とした短期資金調達を行い、利回りと調達金利の差から利益を得る運用が行われていました。
しかし、フランスの財政問題や政治的不透明感を背景に国債利回りが上昇し、債券価格が下落したことで、レバレッジを利用した運用に損失が発生しました。
なお、離職者数は業界関係者による推計であり、すべてが運用損失による解雇というわけではありません。
なぜ重要なのか
国債は一般的に信用力の高い投資対象と考えられています。
しかし、国債そのものの信用力が高くても、レバレッジを利用した運用では、金利の急変によって大きな損失が発生することがあります。
これはヘッジファンドを評価するうえで重要なポイントです。
同じ債券投資でも、単純に国債を保有する運用と、借入れを利用して小さな利回り差を収益化する運用では、リスクの性質が大きく異なります。
何に投資しているのかだけでなく、どのような仕組みで収益を生み出しているのか。
その理解が、ヘッジファンドを選ぶ際には欠かせません。
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5.クレジット型ヘッジファンドArini、年初来損失が21%超に拡大
ロンドンを拠点とするクレジット運用会社Arini Capital Managementの主力ヘッジファンドが、大幅な損失を計上しています。
10月22日の報道によると、同社の約70億ドル規模のマスターファンドは、9月末までに15.7%下落した後、10月に入ってからも約6.9%の損失を計上し、年初来の下落率が21%を超える水準となりました。
損失の背景には、財務状況が悪化した企業の社債やローンへの投資があります。
Ariniは、通信会社や自動車メーカーなどの経営再建に関連する債券を保有しており、これらの市場価格の下落が運用成績に影響しました。
一方、同社が運用する他のクレジット戦略では、主力ファンドほどの大幅な損失は発生していないとされています。
また、厳しい運用成績にもかかわらず、主力戦略に対して約15億ドルの新規資金のコミットメントが集まっている点も注目されます。
なぜ重要なのか
クレジット戦略といっても、その運用方法はさまざまです。
信用力の高い企業の債券に投資する戦略もあれば、財務状況が悪化した企業の債券を安値で購入し、企業再建や債務再編によって収益を得る戦略もあります。
後者はディストレスト投資と呼ばれ、大きな収益機会がある一方、価格変動や投資資金の回収に伴うリスクも高くなります。
今回の事例は、「クレジット戦略」という同じ分類でも、運用対象や投資手法によって成績が大きく異なることを示しています。
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6.中国の大手クオンツ運用会社、海外投資家から3億ドルを調達
中国の大手クオンツ運用会社Lingjun Investment(霊均投資)が、海外投資家からの資金調達を再開しています。
10月22日のReutersの報道によると、同社の海外運用部門は、米国や東南アジアの投資家から少なくとも3億ドルの投資資金を獲得しました。
同社は2024年、中国の証券取引所から取引ルール違反を理由に一時的な取引停止措置を受け、その後、資金調達活動を縮小していました。
今回の資金調達再開にあたっては、リスク管理体制や社内の運用管理体制の強化を進めたとしています。
中国では近年、数学や統計、コンピューターを活用して投資判断を行うクオンツ運用が急速に発展しています。
なぜ重要なのか
クオンツ運用は、運用者の経験や判断だけに依存せず、大量のデータや数理モデルを活用して投資判断を行うことが特徴です。
AIの進展に伴い、投資データの分析やモデル開発の高度化が期待されています。
一方、クオンツ運用では、類似したモデルを利用する投資家が同じ方向に取引を行った場合、市場の変動が増幅される可能性があります。
今回の資金流入は、アジアのクオンツ運用に対する海外投資家の関心が続いていることを示す一方、運用モデルだけでなく、リスク管理やガバナンスの重要性を改めて示しています。
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7.アクティビスト型ヘッジファンドJana、米廃棄物処理会社に経営改革を要求
アクティビスト型ヘッジファンドのJana Partnersが、米国の廃棄物処理会社Casella Waste Systemsに新たに投資し、収益性の改善を求めています。
10月20日のReutersの報道によると、Janaは同社の株式を取得し、利益率の改善や投下資本利益率の向上などを要求しました。
Casellaは米国北東部を中心に事業を展開する廃棄物処理会社です。
Janaは、経営の効率化によって企業価値を高める余地があると考えています。
この動きを受け、Casellaの株価は20日に約8%上昇しました。
なぜ重要なのか
ヘッジファンドの中には、株価の上昇や下落を予測するだけでなく、企業の経営そのものに働きかける運用戦略があります。
これがアクティビスト戦略です。
企業に対して経営改革、資本政策の見直し、事業の再編などを求めることで、企業価値の向上を目指します。
今回の事例では、企業の収益性や資本効率の改善が主なテーマとなっています。
ヘッジファンドの収益機会は、金融市場の値動きだけでなく、企業経営の改善によっても生まれることを示す事例です。
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今週を振り返って
今週のヘッジファンド業界を振り返ると、特に注目したいのは、「市場環境の変化に対応する運用能力」の重要性です。
AI関連株では、ヘッジファンドによる大規模なポジション削減が発生しました。
欧州の国債市場では、金利上昇によってレバレッジを利用した運用に大きな影響が生じています。
クレジット市場でも、財務状況が悪化した企業の債券に投資するファンドで大幅な損失が発生しています。
一方、JPモルガンは、今後10~15年間のヘッジファンドの期待リターンを上方修正しました。
これは必ずしも矛盾する話ではありません。
市場が不安定になれば、損失が発生する可能性が高まる一方で、価格の歪みや投資対象間の収益格差が拡大し、新たな投資機会が生まれることもあります。
ヘッジファンドの特徴は、こうした市場環境の変化に対して、株式ロング・ショート、グローバル・マクロ、クレジット、クオンツ、アクティビストなど、多様な運用手法を活用できることです。
ただし、すべての運用会社が同じように収益を上げられるわけではありません。
重要なのは、どのヘッジファンドに投資するかということだけでなく、それぞれの運用戦略の特徴を理解し、適切に組み合わせることです。
今週のニュースは、ヘッジファンドの可能性とリスクの両面を改めて示す一週間となりました。
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主要参考情報
本稿は、以下の公表資料および報道等を参考に、エアーズシー証券株式会社が独自に編集・作成しています。
1. Investing.com(2026年10月19日)
「Hedge funds cut tech stocks at record pace, Goldman says」
原文を確認
2. J.P. Morgan Asset Management(2026年10月19日)
「2027 Long-Term Capital Market Assumptions」
公式発表を確認
3. Investing.com(2026年10月20日)
「Investors hedge AI boom with credit default swaps on tech debt」
原文を確認
4. eFinancialCareers(2026年10月20日)
「London's macro hedge fund pain as up to 100 people are out」
原文を確認
5. Hedgeweek(2026年10月22日)
「Arini's YTD losses exceed 21% as distressed bets deteriorate」
原文を確認
6. Reuters(2026年10月22日)
「Chinese quant fund Lingjun draws $300 million from overseas investors」
原文を確認
7. Reuters(2026年10月20日)
「Activist Jana takes stake in Casella Waste, urges changes」
原文を確認
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ご注意事項
本資料は、各種公表資料および公開情報等を参考に、エアーズシー証券株式会社が情報提供を目的として独自に編集・作成したものです。
本資料は、特定の金融商品、投資戦略その他の取引の取得・売却等を勧誘または推奨するものではありません。
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本資料の内容は2026年10月23日午前時点で確認できた公開情報に基づいており、予告なく変更されることがあります。
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