ヘッジファンドと投資信託

比較対象とする投資信託について
これまで、本来の意味のヘッジファンドともいうべき市場中立型で絶対収益を追求するヘッジファンドについて説明してきました。これから様々なヘッジファンドの運用手法や運用戦略などについて説明していきますが、その前段階として、みなさんがご存じの金融商品と比較しましょう。定番の比較になりますが、投資信託と比べてみましょう。
投資信託は、イギリスで使われる英語の “Investment Trust” を日本語に置き換えたものです。アメリカ英語で投資信託に当たる言葉は、“Mutual Fund”になります。“Investment Trust”は日本の投資信託とほぼ同じ意味合いで使われていて、公募(public)のものも私募(private)のものもあります。それに対して“Mutual Fund”は、オープンエンド型の会社型投資信託を意味していて、すべて公募になります。投資家はいつでも基準価額という時価を知ることができて、換金することもできます。
ここでヘッジファンドと比較する投資信託を、ミューチャルファンド(Mutual Fund、公募の投資信託)とします。私募の投資信託(以下、“私募投信”といいます。)という、限られた投資家のみに販売される投資信託と比べた場合、ヘッジファンドとの差異がはっきりしません。私募投信は、セールス対象が大口の機関投資家に限られていて、きわめて自由度の高い運用も可能となるため、ヘッジファンドと大きく変わりません。
そもそも私募投信は一般の人が簡単に買うことができません。そうしたこともあって、一般の投資家が普通に購入することができる「公募投信」と比較することで、ヘッジファンド固有の特徴をわかりやすく伝えることができればと考えました。
公募投信であれば、証券会社だけでなく、銀行や郵便局でも買うことができます。また、公募投信であれば、話題のNISA(少額投資非課税制度)で投資することもできます。
ちなみにNISAは、イギリスのISA(Individual Savings Accountを略したもので、個人貯蓄口座です。)をモデルにした日本版のISAです。NISAは Nippon Individual Savings Account を略したものですが、“Japan” でなく、“Nippon”を使っているところ、「ニサ」ではなく、「ニーサ」と伸ばす愛称にしたのはお洒落でセンスの良さを感じます。非課税貯蓄というと、私の世代は“マル優”を思い浮かべますが、NISAの方がしゃれていますね。
話が脱線しましたが、公募投信であれば、既に投資した経験がある人も多く、商品内容がよく知られているので、比較対象として相応しいわけです。また、インターネットで「投資信託ランキング」や「投資信託おすすめ」などで検索すれば、売れ筋の投資信託の具体的な商品情報も簡単にゲットすることができます。
ヘッジファンドと公募投信との違い
ヘッジファンドの特徴について、公募の投資信託と比較しながら、まとめてみましょう。
① 最小の投資金額が、1,000万円以上とか、10万米ドル以上とされていて、投資にまとまった金額が必要になる。
・インターネット取引を使えば、少ない金額から投資できる投資信託と比べるとかなりの金額が必要です。
② 運用情報の詳細が開示されない。そもそもどこで買えるのかもわからない。
・公募の投資信託は広く募集するため、様々な情報が開示されますが、ヘッジファンドの情報は限られています。
③ 基準価額が毎日算出されないため、現在価値がすぐにわからない。
・公募の投資信託は、基準価格という取引する際の値段が日次で公表されますが、ヘッジファンドは月次の公表になります。
④ 換金が簡単でなく、解約代金をすぐに受け取れない。
・公募の投資信託は、原則いつでも解約できますが、ヘッジファンドは長期の運用を原則としているため、解約できるタイミングがあらかじめ、決められています。また、解約金が入金されるのに、1か月以上かかることが多いです。
⑤ 空売りやレバレッジなど、自由度の高い運用ができる。
・投資信託は、「投資信託等の運用に関する規則」による運用の制約がありますが、ヘッジファンドの運用に関しては、そのような制約がないため、ハイリスクハイリターン型のリスクが高い運用も可能となります。
⑥ 運用者の自己資金と一緒に運用することができる。
・投資信託も運用開始時にシードマネーと呼ばれる初回運用資金が投じられることはありますが、ヘッジファンドでは、ヘッジファンドの運用者の自己資金を合算して運用することができます。
⑦ 手数料が高く、成功報酬型の手数料もある。
・投資信託もアクティブ運用で高めの手数料がかかるものもありますが、ヘッジファンドの手数料は高めに設定されています。また、ヘッジファンド固有の成功報酬型の手数料が課されるファンドもあります。
それでは、ヘッジファンドと投資信託の相違点について個別に見ていきましょう。
ヘッジファンドは高嶺の花?
公募投信は、さまざまな金融機関において、全国津々浦々にある郵便局でも買うことができる一般的な金融商品です。基本的にどの金融機関も投資信託の販売に力を入れていますから、「投資信託を買いたいんですけど…」と窓口に行けば、どのような疑問点についても親切に説明してもらえると思います。それに対して、ヘッジファンドはどこで買えるのかすらわかりません。
投資信託は、最低購入金額が1,000円からという金融機関が多いようです。ネット証券においては「100円から始められる投資信託」を売りにしているところもあるようです。インターネットで取引コストを削減できるとはいえ、100円で金融商品を販売して儲かるのでしょうか?投資する方も100円で投資信託を買って、20%の運用収益をあげて、20円儲けても、あまりうれしくない気がするのですが…(100円で投資するならば、私ならば宝くじです!)
それに対してヘッジファンドの最低投資金額は、通常、数億円です。日本ではヘッジファンドを提供する金融機関の努力と、インターネットなどのデジタル技術を使ってコスト削減をることで、少ない金額でも投資できる環境が整いつつあります。(それにしても海外送金の銀行手数料は高すぎます!安全でコストの安い海外送金の技術革新を期待したいです。)
金額が下がったといっても、ヘッジファンドで投資を始めるには1,000万円、若しくは10万米ドルが必要でしょう。ヘッジファンドの場合、お客様に商品性や投資リスクを丁寧に説明しながらセールスする必要があります。かなりのボリュームの商品説明資料を提供することが求められます。契約を結ぶために、かなりの時間と労力を費やす必要があり、薄利多売ができないわけです。
手前味噌になりますが、エアーズシー証券は、円安が進む現在、条件付きで5万米ドル(2025年2月の為替レートで800万円弱)から投資できるヘッジファンドを取り扱っています。詳細につきましては、当社にお電話等でお問い合わせください。
ヘッジファンドは1,000万円程度ないと投資できない金融商品というわけですから、普通の投資家には少し敷居が高い、高嶺の花のような金融商品かもしれません。高嶺の花とは、高い山の峰まで登らないと見ることができない、普通の人には手が届かない花のことです。でも言葉を換えれば、高い山に登ってでも見る価値のある奇麗な花、高い山に頑張って登れば見られる貴重な花とも言えます。
ヘッジファンドは、まさにそういう貴重な花に例えられるような金融商品だと思います。ヘッジファンドに投資をすれば、高い利益が得られるかもしれません。その意味では、高値(たかね)の花と呼んだ方が適切かもしれませんね。
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