信頼とは何か?顧客本位の営業姿勢で必要なこと---Part 2
投資信託の販売責任とは
テーマ性の素晴らしいものやSDGsなどの投資信託は投資家に一定のニーズはあると思いますし、その産業や社会的取組みにリスクマネーを提供するという価値はあります。それが国益につながると思うからです。
つい最近フィディリティ投信から「テンバガー」という名を愛称にした投資信託が発売されました。日本の割安に放置されていながら実は利益成長が期待できる株式を組入れるファンドです。おじさんは今が割安か、と言うと必ずしもそうではないでしょうと回答します。株式の選別はデータ的には目星は付いていると思いますが、成長速度をどう判断するか、勝負の分かれ目です。投資機会をどう判断するか。長期投資を前提にするなら、しばらくはキャッシュポジションを取ります。公募投信は株式の選別より投資機会の方が大切だと思います。販売責任者はその見極めと結果に責任を待たなければならないと思います。その為にヘッジファンドは自己資金から始めて想定通りの期待リターンが出始めてから、投資家に募集を開始します。他人の資金を増やす責務を負うのです。慎重の上にも慎重です。説明動画を見ると、優秀なファンドマネージャーだと思います。ジャンセンのαは長期になるほど市場平均リターンから優位に上方乖離しています。
新NISAで始まる2024年に備えて、2023年12月各投資信託会社は既存ファンドを見直し、多いところでは100本以上販売停止にするようです。駄目なものを償還するということでしょう。投資信託は長期投資を前提とした金融商品です。投資信託の販売責任は長期投資に耐えることができるものかどうかを見極める責任です。短期の期待リターンで判断するのではなく、5年10年の投資実績で確実に期待リターンを上げてこそ評価されるべきだからです。そこに信頼が生まれるのです。日本の投資信託はインデックスファンド以外、長期投資に耐えられないのでしょうか?
次の収益源は何?収益源が収益減に
インデックスファンドの隆盛や投資信託の乗換自重などで収益源が収益減になると、新商品が出てきます。販売者は仕組債を打ち出します。マイナス金利の時代に、表面クーポン3%。発行体は有名な銀行や世界的な公社です。デフォルトリスクは無さそうです。しかし、金融リテラシーから見ると実に怪しいです。商品理解が正確にできないまま販売していたようです。厳しいようですが、自分が理解できないものを販売するのはお客様に対して背任行為だと自覚してください。リスクを取るのはお客様なのです。
おじさんも大手証券会社時代にお客様へ提案していました。相手は法人でした。
A株式を500円で20万株購入したい。約定代金は1億円。市場で買付ければ委託手数料がかかります。時価580円だとすると、注文を出しても買えません。買うことは決定事項として定期預金は解約しました。
そこで、仕組債を提案です。A株式のオプションを組みこんで、ノックインしたら500円で20万株の決済をします。クーポンを取りながら手数料なしで必要株式が揃います。これを考案した人は賢いなあ、と思いました。そこで、おじさんたちは「ターゲット・バイイング債」と名付けてました。
以前の日本的商ビジネスでは株式持ち合いは結構ニーズがありました。特に銀行株式のターゲット・バイイングは多かったです。それが、個人向け金融商品として出てくるとは思っていませんでした。本当にニーズがあったのでしょうか?
実はこの商品、発行体のクレジットはほとんど関係ありません。見た目を良くするだけです。当時、世界銀行債は5億円以上、5000万円以上なら外国銀行が発行体の主流でした。ポイントは参照証券として内包されているオプション価格です。そのオプション価格をクーポンとして投資家に支払います。だから値動きの大きい株式ほどクーポンが高くなります。金融経済学の基本原理は、リターンが高くなればリスクは高くなります。
普通の銀行の定期預金が0.01%の時に外国の銀行ですが、表面クーポン3%はおかしいと思わなければだめです。しかし、株式の平均的価格変動率は2~30%ですので、逆にクーポン3%は相当低いです。おじさんは「いつもリスクに見合うリターンが大事」と言っています。その差額はまるまる証券会社の利益になります。
以前、仕組債は麻薬のような金融商品です、と書いたことがあります。一度、ロールをすると次々とロールを期待します。辞められなくなるのです。ノックイン価格とノックアウト価格があり、ノックアウト価格に達すると現金償還が確定します。現金償還するということはその株式はどんどん上昇しているのです。本来ならその株式に投資をすれば3%ではなく、もっと大きなリターンを得られたのです。
株価が上昇するということは益利回りは減少します。リスクは上昇し、同じ株式でまた組成すると以前よりは高リスクになっているのです。仕組債は債券ですが投機商品として投資機会を見極めなければなりません。その株価が大底の時が最適です。その為、プロ向けの商品なのです。投資家のリスク許容度を確認しないで販売する金融商品ではありません。
懲りない面々、投資信託を自由に販売できないか?
投資信託から仕組債へと収益源は変わります。最後はファンド・ラップ口座に行き着きました。一見、素晴らしい金融商品のように見えます。
弁当屋に行って、買ってきた「鮭弁」の鮭が小さかったら、まあ仕方ないか、次は買わないよ、となるでしょう。では「鮭弁」なのに鮭が入っていなかったら、どうでしょう?おじさんは文句を言いますよ。では、腐っていたらどうします。文句では済みません。
しかし、全く想定できないリスクではありません。通常、知っている販売者なら信頼してお客様はそこで買うのです。だから、販売者の方が信頼を得るために細心の注意を払い信頼を裏切らないようにしなければならないのです。
ファンド・ラップの信頼性は何?長期投資の器だけ作っても信頼はされない。
AI投資と人間の叡智どちらが賢いか、永遠の課題になるかもしれません。別の機会に書きたいと思いますが、AIのファンド・ラップが出てきました。人は当てにならない。データを分析して投資判断するのです、確実性が高いのかもしれません。その投資は、AIを信頼するのです。AIを信頼できますか?AIにクレームを言えますか?
おじさんは、ファンド・ラップは合理的な投信乗換口座だと思います。残高に応じて定率で報酬を取るのです。投資信託も信託報酬は取られているのですよ。二重に取られている感じがします。その投資信託が他社の取り扱いのものなら仕方ありませんが、自社の子会社のものなら二重取りですね。
投資信託を組み合わせて、これだと信じて厳選したのなら直接購入した方がコスト低減になりますよ。ファンド・ラップで購入する場合はノーロードになるものが多いですが、3年も運用すると定額の方がコスト負担になってきます。1回キリと毎年定額で取られる場合とでは長期投資の場合、大きな差になります。ファンド・ラップも投資期間は短期ですか?顧客利益を最優先して企画された金融商品では無いような気がします。
結局、その会社で取り扱う投資信託から厳選されるわけです。その選別の仕方は本当に信頼できますか?何となく売れ筋の投資信託が選別されるようになります。
株式市場全体が下向きになった時、ロスカットはするのでしょうか?たぶん放置されて回復まで待つ戦略です。売却の判断を出してその後急騰した場合、言い訳が付かないのです。その場合、定率コストが長期に取られてしまいます。ファンド・ラップは成功報酬型を選択すべきです。しかし、成功報酬型は、それぞれの投資信託の運用コストが高かったりします。
また、新しい「打ち出の小鎚」ができました。ファンド・ラップが信頼される金融商品となるためには、常にお客様利益を出しながら成長する商品でなければならないと思います。証券会社の規模やAI運用を信頼して運用を託するのであれば、委託する前に一度ブログを見たのでとお尋ねください。話を聞いた後でファンド・ラップをやるのはお停めしません。
信頼を得る営業姿勢とは
30年以上の経歴で証券会社の戦略商品を見てきましたが、そこには投資機会で顧客利益を獲得しようという投機の営業姿勢が根強く残っています。確かに短期で収益を上げれば、お客様も会社もこんな効率のいい営業はありません。しかし、投資の大原則は長期投資です。分かっているようで分かっていないのです。「信頼はセールスはしない」と前回のブログで書きましたが、自分が本当にいいと信じられるものを自分で見極めて、長期投資を推奨することです。この営業姿勢でセールスをすべきです。金融は予測不可能です。失敗は常にあります。自分が信じて勧めたものであれば、言い訳はできませんし、改善策を真剣に考えます。
営業姿勢で大切なことはリスクも一緒に取る姿勢です。その姿勢が無ければ金融商品を勧誘する資格はないのです。投資はリスクを取ってリターンを得る。営業も同じです。そういう意味で、証券会社のローテーション人事は無いほうがいいと思います。おじさんは、10年ある支店にいました。記憶には、「お客様からの大きなクレームは無かった」と思います。
参考文献
日本証券経済研究所【編】証券経済研究 第8号 内田ふじ子「投資信託改革の歴史とその成果」
ブルームバーグ 2010年7月23日 浅井真樹子
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