ヘッジファンドの換金性について

ヘッジファンドの換金に係る制約

 ヘッジファンドと公募投信の違いの中で、おそらくヘッジファンドが一番劣っているところは換金性だと思います。ヘッジファンドは、長期運用を前提としている金融商品であるため、換金するのに時間がかかってしまうのです。公募の投資信託であれば、原則、毎日、解約して換金することができるのに対して、ヘッジファンドでは事前に定められたタイミングでしか換金ができません。換金に手間がかかり、お金を受け取るのに時間がかかることは、ヘッジファンドの一番の弱点と言えるかもしれません。
 ヘッジファンドの解約に係る制約を、ロックアップ期間があるという言い人がいます。ロックアップ期間というのは、一般的にストックオプションなどで権利を取得してから一定の期間、売却ができないルールです。ヘッジファンドの場合、投資してから一定の期間だけ売却ができず、その期間を過ぎたらいつでも売却ができるようになるわけではありません。解約できるタイミングが決まっているだけなので、ロックアップ期間という表現を使うのは適切とは言えません。
 もともとヘッジファンドは何十億円以上といった大規模な資金を、特定の大口投資家のために、オーダーメイドにすることで「ローリスクでありながら、ハイリターンを追求する」特別な運用をするファンドです。少ない金額でヘッジファンドを購入する投資家は、その優れた運用手法を間借りしているようなものなので、限られたタイミングでしか解約できない制約があるわけです。少し肩身が狭い立場というわけです。
 これまでにも書いていますが、公募投信のようにいつでも解約を受け付けるようなファンドは、解約のための資金をプールしておく必要があって、運用できない資金の分だけ利回りが低下してしまいます。高い利回りを維持するためには、四半期決算のタイミングだったり、毎月一度、月初だけだったり、あらかじめ決められたタイミングでしか解約ができないようにするのは止むを得ないと割り切らなければなりません。
 また、解約する場合は45日前など、事前に余裕をもって解約の申込をする必要もあります。計画的に解約資金を準備することにより、可能な限り運用の効率性を損なわないようにする必要があるわけです。小規模の投資家にとって、自分のお金なのにすぐに解約できないのはおかしい!と不満に思う気持ちもわかります。解約に時間がかかっても、ローリスクで高い利回りを追求するため、解約に時間がかかるのはやむを得ないと考えて頂きたいわけです。
 解約する人にとって不便な仕組みではありますが、解約しない大多数の投資家にとっては、効率的な運用を継続できて、高い利回りを追求できるわけですから、大口投資家の立場で考えると、ある意味、理にかなっている仕組みとも言えます。そのため、ヘッジファンドで運用する資金は、5年、10年といった長期間に渡り運用しておける資金の運用に限った方がよいのかもしれません。

ヘッジファンドの換金方法

 ヘッジファンドを換金する方法については、ヘッジファンドによって千差万別なので、運用を開始する前に商品説明書等でよく確認しておく必要があります。そもそも換金する行為が、「解約」なのか、「償還」なのか、「(契約)解除」なのか、ファンドによって呼び方すら違う場合があります。
 投資信託では、換金することを解約と言い、すべての運用を停止して、ファンドの全額が換金されることを償還というのが一般的です。当社が取り扱っているヘッジファンドの場合は、償還(「再び受け取る」ことを意味する動詞 redeem の名詞形の redemption を翻訳したものです。)を使います。償還という言葉を使いますが、全額を解約しなければならないわけではありません。いくら以上という条件はありますが、保有している株の一部を償還することも可能です。
 少し具体的に説明しましょう。当社のヘッジファンドを換金するためにはお客様に「償還申込書」を記載して頂きます。償還する株は小数点以下第3位の端数まで解約することができます。受取る通貨を指定することもできます。「全額を日本円で」、「全額を米ドルで」、「いくらを米ドルで受け取り、残金は日本円」というように通貨を指定して受け取ることもできます。為替レートの関係で、ぴったりの数字にならないケースもありますが、極力、お客様の要望に沿う解約ができます。ヘッジファンドは換金方法に制約がある分、できる限りお客様の利便性を高められればと考えている次第です。 
 当社以外のヘッジファンドの場合、解約するには、銀行の定期預金のように全額を一度で解約することしかできないものもあるようです。解約するのに、最低ロットが定められているファンドもあります。かなり自由に部分解約ができるファンドもありますが、自由度が高く解約に手間がかかる場合、解約者が増えて管理コストが増大します。利便性が高いと運用利回りの低下に跳ね返ることが多いです。ヘッジファンドの投資をする場合、リスクやリターンで選ぶことが多いですが、換金ルールは大変重要です。解約にどれだけ時間がかかるのか、金額いくら以上から部分解約ができるのか等、契約する前に営業担当者に事前に確認する必要があります。解約方法についての説明が曖昧だったり、納得できる説明を受けられない場合はその販売会社から購入するのをやめた方がいいでしょう。 

実際に解約してみると…

 解約という行為は、本当にお金が戻ってくるかどうかを確認する手段とも言えます。運用が正しく行われていて、直近の資産価値で換金ができるかどうかを試すことになるからです。一方で資金使途がないにもかかわらず解約するのは、確認作業として必要かもしれませんが、運用効率に関してはマイナスとなります。
 たいへん残念なことですが、日本の運用会社の中には、いかがわしい会社もあるようです。金融庁に登録をしていない金融業者などで「高利回りで元本保証!」などとあり得ないことを言って資金を集める会社もあるようです。普通に考えれば、リスクを全く取らずに高いリターンをあげる運用なんてできるわけがありません。過去実績にマイナスがないことを言うことはできても、将来に渡ってマイナスにならない運用だということはできないわけです。将来に渡って元本保証となる運用は、リスクフリーレートと言って、普通預金の利息くらいにしかならないわけです。(定期預金の利息も、期日前に解約すると普通預金の利息になってしまいます。)
 投資詐欺の運用では、高い利回りが得られそうなアイデアを掲げて、実際にはそのアイデアのとおりに運用しないものがあります。投資詐欺の代表とも言えるものに、ポンジ・スキーム(ポンジ氏の仕組み)があります。1920年代、米国のビジネスマン(詐欺師?)チャールズ・ポンジが行った資金集めの仕組みからその名前がついている詐欺手法です。その内容については、次回のブログで説明したいと思います。
 解約と言えば、当社で大口の運用をして頂いている大切なお客様で、本当にお金が戻ってくるかを確認しようと考えたのか、まとまった金額で解約された方がいました。当たり前のことですが、当初からご説明していた通りのスケジュールと内容で解約金をお支払いしました。解約金がきちんと払われることを確認してご納得頂けたのか、お客様は、解約で受け取った資金を使って、ヘッジファンドの運用を継続してくださいました。
 お客様は日本で想定していた米ドル資金を受け取れることを確認することができて、当社は運用を継続することができてハッピーエンドとなりました。しかしながら、日本で外貨の入金と送金を行うと取引銀行に多額の手数料を支払う必要があります。銀行は、日本円を米ドルに両替する時など、為替レートの差額で儲けるビジネスモデルです。今回のように米ドルで受け取った資金を両替しないで米ドルのまま海外送金をする場合、両替が発生しないため、“リフティング・チャージ”という名の手数料を取ります。
 リフティング??? サッカーでボールが地面に落ちないようにしたり、ラグビーのラインアウトでボールを取る人を持ち上げたりするのを、リフティングというのは知っています。銀行は何をリフトするのでしょう???送金額が大きかったこともあり、その時のリフティングチャージの金額は、なんとビックリ!50万円以上でした。銀行さん、いくらなんでも取りすぎじゃないですか!銀行の外為手数料は本当に高すぎます。IT技術が進んでいる現在、何とかなりませんかね!