通貨を選べるヘッジファンド

ヘッジファンドの通貨選択制とは

 これまで何回かに渡って、ヘッジファンドと投資信託の違いについての説明をしてきましたが、今回で最後になります。すべてのヘッジファンドにあてはまる特徴ではありませんが、自由な運用ができるヘッジファンドならではの特徴として、ヘッジファンドの通貨選択制についてご説明します。
 通貨選択制とは、運用対象や運用手法が同じヘッジファンドで、購入・売却する通貨を事前に選ぶことができるヘッジファンドのことを言います。当社が取り扱っているヘッジファンドでは、米ドルか日本円かを選べたり、多通貨から選べるものもあります。ヘッジファンドによっては、米ドル、ユーロ、日本円、英ポンド、スイスフラン、豪ドルの中から選べるファンドもあります。
 自国通貨を事前に選ぶことによって、世界で著名な海外のヘッジファンドの運用を、為替変動リスクなしで投資することができます。日本円でヘッジファンド投資を始めて、解約代金も日本円で受け取ることによって、円高・外貨安によって為替差損が発生しないようにすることができるわけです。
 尚、基本的にどの通貨を選択するかによって、運用内容が同じヘッジファンドであっても、その通貨の金利水準(リスクフリーレートの違い)により、利回りが変わります。簡単にいうと、日本円やスイスフランなどの金利水準が低い通貨を選んだ場合は、米ドルなどの高金利通貨で運用する場合と比べて、利回りが低くなります。このあたりの理由は、少し難しい内容になりますが、為替レートの金利裁定と呼ばれます。そのあたりのことを以下のブログにまとめていますので、ご覧ください。 

 円建ての市場中立型ヘッジファンドはこちら

 通貨選択制は、自国通貨を選ぶことで為替変動リスクがないように運用することができるだけでなく、将来、その通貨の価値が上がりそう(通貨高になりそう)な通貨を選んで投資することで為替差益を狙う投資もできます。将来、ユーロ高になるだろうという相場観がある場合、投資通貨としてユーロを選ぶことで、投資を始めた時点より、ユーロの価値が高くなった時点で為替差益を享受することができるわけです。
 当然のことながら、自分が予想するようにユーロ高にならないで、ユーロ安になった場合、為替差損が発生しますので注意が必要です。どの通貨の価値が上がるか、下がるかを予想するのは難しいことから、自分が既に投資している通貨以外の外貨で投資するのがお勧めです。日本円、米ドル、ユーロなどの通貨分散をおこなうことで、為替リスクを減らすことができます。 

途中で通貨を変えられるヘッジファンド

 通貨選択制のヘッジファンドに投資するメリットは他にもあります。それは、ずばり、運用を始めてから運用する通貨を変更することができることです。米ドル建てのヘッジファンドで運用を始めたけれど、米国経済の先行きが怪しくなった場合など、米ドル安が懸念されたとします。欧州経済の見通しが明るく、米ドル安・ユーロ高になりそうだと考えたら、運用方針、運用対象を変えずに運用通貨を米ドルからユーロに変更することができます。
 当初想定した通りに、運用開始時に選んだ通貨の価値が上がった段階で為替差益を確定するために通貨を変更することも可能です。その反対で、当初の思惑と違って為替差損が発生している場合に、為替差損がさらに増えないように損切りすることも可能になります。
 ここで注意しなければいけないことは、利益を確定した場合など、通貨変更をした段階で利益が発生していれば、利益に対して納税義務が発生することです。為替差益や為替差損を確定させることにより所得金額に影響が出ることを考慮しないといけません。為替差益が発生したタイミングであれば、所得金額が増えて納税額が増えます。逆に為替差損が発生したタイミングであれば、所得が減ることになります。いずれにしても、翌年の確定申告で納税対応が必要になります。
 課税の詳細については、“税理士等にご相談ください”ということになりますが、運用益については公募投信の売却益と同様に、運用損益と合算されて、申告分離課税が適用されます。すなわち、他の所得とは合算されない定率課税となります。税率は20.315%です。国税が所得税15%と復興特別所得税が0.315%の合計15.315%、地方税である住民税が5%となります。通貨選択対応をした場合、翌年の税務申告に影響が出ますので、必要な書類を保存しておき、通貨の変更をした翌年に確定申告が必要になります。ヘッジファンドに係る税金に関しましては、以下のブログをご覧ください。

ヘッジファンドの課税について はこちら
 
 投資通貨を変更するのに、当社が取り扱っているヘッジファンドなどは、手数料はかかりません。通貨を変更する頻度は、1年間に1回だけなどの制約があったりしますが、為替リスクを減らしたり、為替差益や為替差損を確定することができるメリットがある運用といえます。
 ヘッジファンドには、ファンドによって、通貨選択制のような個性を持つ商品がありますので、情報収集は重要です。ヘッジファンドにご関心のある方は、是非とも、当社や当社のヘッジファンドを取り扱うIFA(独立ファイナンシャルアドバイザー)までお尋ねください。