自己資金も一緒に運用するヘッジファンド

本気度が違うファンドマネジャー
公募の投資信託の運用とヘッジファンドの運用にはいろいろな違いがあります。公募投信だと基本的に買い中心の運用となって、ヘッジファンドで行える絶対収益を追求する運用が難しいことは前回ご説明した通りです。ヘッジファンドという金融商品は法的な制約が少なく、自由で柔軟な運用ができることによる違いについてもう少し説明をします。
ヘッジファンドでは運用会社の自己資金やヘッジファンドの経営トップの資金、時には、ファンドマネジャー自身の資金も併せて運用することができます。投資信託でも運用を開始するにあたって、シードマネー(seed money、種銭、着手金)を入れる場合がありますが、そのお金は円滑に運用を開始することが目的であって、シードマネーの提供者に高い利回りを還元することが目的ではありません。ヘッジファンドでは、運用会社関係の自己資金をお客様の資金と併せて運用することができて、資金提供したみんなが高い利回りを享受しています。
当社が取り扱っているAIに特化したヘッジファンドでも、ヘッジファンドの創業者のオーナーが1億5,000万ドル、ファンドのポートフォリオマネジャーが500万ドルといった規模で個人的に資金拠出をしているようです。当然のことながら、誰が投資しているか、投資家の個人情報は公開されないので、本当に投資しているかを確認することはできません。上記の金額も、大口投資家や販売会社に対して、「このヘッジファンドは自分も素晴らしいと思うので、自己資金●●ドルを投資しているんだ」といったセールストークによって知ったベースの情報です。
公募の投資信託の場合、いろいろと運用の制約があってオーナーやファンドマネージャーが自己資金を投入することは多くないと思います。そもそも運用に制約がある投資信託では、自己資金を増やすのに最大限のパフォーマンスを追求する運用は難しいことから、自己資金を投入しようと思わないのかもしれません。
ヘッジファンドに投資することは、世界有数のお金持ちが行う運用と全く同じ運用のメリットを享受することができるというわけです。
サラリーマン・ファンドマネジャー
私が銀行員として働いていた頃、「銀行のお金を融資するときは、その会社に自分のお金でも貸すのかを基準に考えろ!」と上司から言われました。サラリーマン銀行員になるなということです。ファンドマネジャーも同じでサラリーマン・ファンドマネジャーには限界があります。自分のお金や会社のお金、ボスのお金を運用する場合の運用担当者の本気度は、サラリーマン・ファンドマネジャーとは違うと思います。
投資信託の運用担当者も能力が高く、全力で運用していることに間違いはありません。よいパフォーマンスをあげればインセンティブボーナスがもらえるでしょう。悪い運用が続くとファンドマネジャーから外されることもあると思います。しかしながら、お給料をもらって他人のお金を運用するサラリーマン・ファンドマネジャーの場合、首になることは多くないと思います。
詳しくは手数料のところでご説明しますが、ヘッジファンドは成功報酬型の手数料体系を取るファンドもあって、良いパフォーマンスだと、ヘッジファンドとしての評判がよくなるだけでなく、運用会社の利益に直接寄与することになります。そんなわけで、ヘッジファンドのファンドマネジャーの運用は、プロ中のプロの運用なんて言われたりもします。ヘッジファンドのファンドマネジャーは高い報酬が得られるものの、パフォーマンスによって仕事を失うケースもよく耳にします。ヘッジファンドのパフォーマンスが悪い場合、チーム単位で全員解雇!なんてこともあるようです。
ヘッジファンドのファンドマネジャーは破格の年収が得られます。大学を卒業して1年目で「年収1500万円+ボーナス」なんて条件で入社するケースもあるようです。うまくいったら年収数億円という世界です。金融界のMLB(メジャーリーグ・ベースボール)といったところでしょうか。
日本人の進学校の高校生が大学に行かないで、MLBと契約したなんてニュースがありました。新卒で投資信託の運用会社に就職することは珍しいことではありません。今に日本の大学生が、世界の著名なヘッジファンドに就職する時代も来るかもしれません。海外のヘッジファンド業界が、日本の金融機関やMLBみたいに育成してくれるのかは定かではありませんが…。
良いファンドはクローズになる前に!
海外の著名なヘッジファンドは、上に書いたように手数料収入を得ることよりも運用実績をよくすることを重視します。そのため、効率的な運用ができる規模を超える場合、新規の募集を停止することがよくあります。いわゆるクローズドの状態になるわけです。なぜ新規募集を停止するかというと、自分たちのお金も入っているので、高い利回りを追求することを最優先していて、適正な資産規模に留める必要があるからです。
インデックス運用のように一定のルールに基づいて淡々と株式等を買っていけばいい運用であれば、ファンドの規模がいくら大きくなっても、問題なく運用ができると考えます。しかしながら絶対収益を追求する裁定取引を行うヘッジファンド等の場合、市場の歪みを見つけて利益を求める運用をするケースなどでは、投資できる株式等のボリュームに限度があり、一定の規模を上回ると投資効率が落ちてしまいます。
投資信託でも最適な運用規模に抑える運用をするものもあると思いますが、多く売った方が買付手数料等が増えるので、人気が出たファンドに関して、適正な運用規模を超えても募集し続けるケースがあるのではないでしょうか。ヘッジファンドでは買付手数料を増やすより、運用資産残高に応じて得られる残高報酬が重視されます。
当社のホームページでも「募集枠の終了が近いファンド」、「募集枠が終了したファンド」として、ヘッジファンドのご案内をすることがあります。本当に素晴らしいファンドは適正な規模になるまでの一定期間だけしか購入するチャンスがないケースがあります。そういうファンドを購入するためには、信頼できる証券会社やIFA(独立ファイナンシャルアドバイザー)の営業マンから有益な情報を入手するしかありません。ヘッジファンドの場合、情報収集が成功する鍵とも言えます。
尚、このブログでヘッジファンドに投資するメリットについてお話していますが、すべてのヘッジファンドが公募投信よりも良いと言っているわけではありません。最高のヘッジファンドは、最高の公募投資信託を上回るものがあるくらいで考えてください。ヘッジファンドは玉石混交で、中には胡散臭いものもあるのが現実かもしれません。
最高のヘッジファンドに出会うこと、最高のヘッジファンドを見極めることが重要です。
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